インコをお迎えして一緒に遊んだりすると彼らの「運動能力」に驚くことが多くなります。
まるで「自分で考えることのできる、コントローラーのないドローンみたい」という印象を持つ人もいるのではないでしょうか。
そうなると次に気になるのは「クリッピング」についてです。
クリッピングするかしないかは長年の愛鳥家の間でも意見の分かれることでもあります。
この記事では、クリッピングの必要性、やり方や頻度・注意点などを詳しくまとめてみました。
目次
インコのクリッピングのメリット・デメリット
まず最初に「クリッピング」について説明しましょう。
「クリッピング」とは鳥の風切羽をカットして短くし、飛びにくくすることです。
カットされた羽は抜け替わると元と同じように普通の羽が生えてきます。
- 放鳥中にうっかり窓やドアから外で出てしまうことが防げる
- パニックになって飛び回り、家具や窓に激突して怪我をすることが防げる
- お散歩に連れ出した場合、ハーネスが外れてしまったり、キャリーを落としてしまったりしたときに鳥が遠くへ行ってしまうことを防ぐことができる(ただし「風に運ばれて」案外遠くまで行く可能性は残っています)
- 放鳥終了後、ケージに戻すときに逃げ回る鳥を追いかけ回して捕まえる必要がなくなる
- うまく飛べないことで飼い主に対する依存が強くなり、人間との関係が濃密になる
- 中~大型インコの場合、発情などで気が荒くなった時にも攻撃性を低下させることができる
- インコが「飛びにくくなっている」ことを理解できずに飛ぼうとして思わぬ所に不時着してしまう可能性がある
- 床で過ごすことが多くなったりして人間がうっかり踏んでしまうことがある
- パニックで飛んだときにうまく身体をコントロールできなくて家具の隙間などに落ち込んでしまったりすることがある
- 運動不足になりやすくなり肥満になる可能性が上がる
- クリッピングのショックにより体調を崩す子もいる
- 外へ出てしまった時に猫やカラスに捕まりやすくなる可能性がある
クリッピングをする・しないに関らず、メリット・デメリットどちらのポイントも基本的に飼い主を含むまわりの人間がきちんと注意することで解決できること、防止できることがほとんどです。
また、クリッピングをしたからといってメリットのポイントが完全に保証されるわけでもありません。
同時にデメリットのポイントが必ず起きるということでもないのです。
インコのクリッピングはするべき?
クリッピングは飼い主と愛鳥の双方が快適に暮らすためのひとつの方法であって、ケースバイケースの事項となります。
「インコと暮らすなら絶対にしなければいけないこと」ではありません。
大型のインコやオウムを飼育する場合は攻撃性を弱めて人への依存を強くし、鳥と飼い主との信頼関係をより強くするためにクリッピングは必須ともされています。
小型インコの場合はこのポイントは考える必要がありません。
一方で体重の軽い小型インコ達は飛翔能力も大型に比べると目を見張るものがあります。
そのため、「小型こそクリッピングが必要」という意見もあるのです。
クリッピングしたら一生飛べなくなるわけではない
先にも説明したとおり、一度クリッピングしても羽が抜け替わるとまた元通りに普通の羽が生えてきます。
ですから クリッピングすること=一生飛べなくなることではありません。
「クリッピングをしたけれどあまりメリットは感じられないな」と思ったら次からはしない、という選択もできます。
クリッピングは「飛びにくく」するための処置であって「飛べなく」することではないのです。
よく話し合って決めましょう
飼い主自身や同居している家族みんながよく話し合い、愛鳥の性格なども踏まえた上でする・しないの決定をしてください。
鳥と暮らしたことがある・暮らしているという経験者からの意見は耳を傾ける価値がありますが、実際にお世話するのは家族や飼い主です。
そしてインコにはそれぞれの個性があります。
○○さんのお宅ではこうしているから、という話ではないものです。
そもそもクリッピングが必要ない場合も
インコはとても「エネルギー効率」を重視する生き物でもあります。
クリッピングをせずに自由に飛べるはずでも放鳥時の移動の際、「ちょっとそこまで(肩や手に)乗せてって」と飼い主や仲良しの人間にヒッチハイクする子も多いです。
そういう子の場合、クリッピングしても生活に影響はないかもしれません。
逆に放鳥のためにケージを開けたら「まず嬉しそうに部屋をぐるっと一周して飛ぶ」とか「遊ぶ前にまず天井近くまで飛んで・それから目的地に移動」というように飛ぶことを楽しんでいるタイプの子ならクリッピングしないほうがいいのかもしれません。
うまく飛べなくなることでショックを受けて体調を崩す可能性が高いからです。
一番避けるべきことは「飛びにくくなったら世話が楽」という人間側の都合のみの考えでの決定です。
クリッピングすることのメリット・デメリットの双方をよく考えた上で飼い主自身が判断すべきことになります。
インコのクリッピングのやり方
クリッピングは基本的に「病院」か「クリッピングのできるスタッフのいるショップ」でやってもらうことがおすすめです。
病院の場合は診察料などが別途必要になりますが、クリッピングそのものの費用はだいたい1000円前後が多いようです。
慣れない人が無理やりインコを押さえつけて行うとインコが暴れて怪我をしたりする原因にもなります。
その他にも怖い思いをしたインコが飼い主のことを大嫌いになってしまう可能性もあります。
自分で行う場合、使う道具は普通のハサミで構いませんが、時間をかけすぎると鳥にも負担になるので切れ味のしっかりしたものを用意しましょう。
インコのクリッピングをする場合、切る羽は「初列風切羽」という部分になります。
翼の先端部分にあたる部分です。
この羽を6~7枚カットします。
鳥の羽を広げてみて一番下にある長い羽が風切羽です。
この部分には神経も血管も通っていません。
クリッピングは鳥の羽の一番美しい部分を切ってしまうので、クリッピングすると愛鳥の容姿も変わります。
見映えを現状維持するために外側の1~2枚の羽を残す方法もありますが、羽が折れて出血する原因になったりケージに引っかかったりして危険です。
片方の翼だけをクリッピングする、という方法は鳥が羽ばたいた時のバランスが崩れていますから怪我の元になります。
インコのクリッピングの頻度はどれくらい?
一度クリッピングしても羽が生え変わればまた新しい羽が生えてきます。
クリッピングを続ける場合は新しい羽が生えてきたタイミングでクリッピングすることが必要です。
インコの羽は2~3か月すればある程度生えそろうことが多いので、クリッピングを続ける場合は状態を確認する習慣をつけましょう。
クリッピングの際はしっかり考えて決めましょう
- クリッピングとは、インコの風切羽をカットして飛びにくくすること
- 一度クリッピングしても羽が生え変われば元通りになる
- クリッピングの状態を保つためには伸びてきた羽をそのたびにカットする必要がある
- 慣れていない人が無理やりカットするのは危険なので、獣医かクリッピングのできるショップスタッフ等に依頼するのが安全
- クリッピングは「必ずしなければならないこと」ではない
- クリッピングする・しないは愛鳥の個性や一緒に暮らす飼い主やその家族みんなが快適に仲良く暮らせるかなどを熟考したうえで決める
クリッピングについては熟練した鳥飼いクラスの人の間でも賛否両論あります。
するから・しないからで「良い飼い主」「ダメな飼い主」が決まるものではありません。
迷子防止のためにクリッピングをしようと考える場合でもまずは「迷子にしない」ことが大切です。
クリッピングする理由が余分の鍵をつけたりするのが面倒・家族に窓や戸の開け閉めを気を付けてもらうことが難しいということなら、「インコと暮らす準備が本当にできているのか」を考え直す必要があるのかもしれませんね。